こんにちはー。ゆずの木です。
今回は渡辺道治さんが書かれた「学習指導の『足並みバイアス』を乗り越える」について解説します。
本書は、小学校教諭である渡辺道治さんが、超多忙・業務過多の状態に陥っている学校現場を少しでも変えていこうと、これまでの実践や考え方を詰め込んだ一冊になっています。
「子どもたちが好き!」
先生方は少なからずこのようなモチベーションで教師を志したはずですが、実際の現場は疲弊しきっています。
持続不可能な程の仕事を両手いっぱいに抱え、身動きが取れていないにも関わらず、今なおその量は増え続けようとしています。
この両手いっぱいの荷物を下ろせばいいのですが、先生方はなかなかこの荷物を下ろそうとはしません。
全員、下ろしたがっているのに。です。
それは、学校現場に渦巻く「こうあらなければならない」という”思考の在り方”に問題があると、著者の渡辺さんは述べています。
本記事では、渡辺さんのマインドや実践内容が記された本書の中から、特に私が印象に残った部分を厳選して紹介し、同じ小学校教諭としての感想も交えながら述べていきたいと思います。
よろしくお願いします。
「足並みバイアス」について
①「足並みバイアス」とは
学校は、「周りと異なること」を嫌う場所です。そのため、前例のないようなことにはなかなかチャレンジできない性格を持っています。
✔ 特別なことをすると、他のクラスから不満が出るかもしれないからやめておこう。
✔ やり方を変えて何か失敗するといけないから、去年までと同じやり方でいこう。
✔ 保護者に何か言われるといけないから、全てのクラスでやり方をそろえよう。
このように、いつの間にか「足並みをそろえる」ことが慣行になっています。
本書では、この「揃えねばならない」という強固な思い込みのことを「足並みバイアス」と表現しています。
②「足並みバイアス」の原因
なぜ「足並みバイアス」が起きるのか。その正体は学校がリスクを避けたがる「ゼロリスク信仰」の持ち主だからです。
先生方は、常に「恐れ」と戦っています。
恐れの対象は「保護者」「地域」「失敗」「正しさ」「新しさ」など様々です。
そのため、なるべく他と違うことをしないことに舵をきっているのです。
③「足並みバイアス」がもたらす害
様々な学習活動が「同じであること」を求められる「足並みバイアス」に囚われると、先生方の「裁量」が無視されて、創造の喜びが奪われてしまいます。
「創造すること」は人々の喜びです。
しかし、「揃えること」が前提の学校現場では先生方の働く喜びが失われてしまうケースが少なくありません。
④「足並みバイアス」の乗り越え方
新しいことを嫌い、揃えることを善とする「足並みバイアス」に囚われている先生は一定数います。ですから、職員会議でも奇抜なアイディアはなかなか通りません。
そこで、本書では「目的」を明確にし、「お試し」「選択形式」を使った提案方法が推奨されています。
例えば、「試しにウチのクラスでやってみていいですか?」というだけで、心理的なハードルはぐっと下がります。
また、「選択形式」にすることもオススメです。人は、自分で選ぶ行為を取るとリスクを感じにくくなるからです。
その際、提案したい案を内容を含む3案ほど選択肢を作ります。選んでほしいものをB案とすると、A案とC案は極端な内容にすると良いです。リスク回避傾向のある人ほど中庸を選ぶ傾向があるからです。
私の気になるポイント
さて、ここからは著者の渡辺さんの考え方や実践について、特に私が気になったポイントについて見解を交えながら述べていきたいと思います。
①入学時は「ワクワク」なのに6年生は「つまんない」
小学校の入学式って、どの子も目を輝かせて入学してきます。
私も小学校の教諭として何度も見てきていますが、そのワクワク感は見てる人全員に伝わってきます。
ところが、自分の教室に戻るとそのワクワク感はなかなか見当たりません。
この6年間で児童に何が起きているのか、渡辺さんは子ども達が学校を「つまらない」と感じる要因を次の3つだと考えています。
- 授業
- 評価
- 宿題
これに関して私の見解は、「1」はちょっとだけ同意、「2」「3」は非常に同意ですね。
つまらないと感じる要因①「授業」
「授業」を子ども達が楽しいと感じるかどうかは「先生の力量」「子どもの意欲」「子ども同士の関係性」「家庭環境」など様々な要因が複雑に絡み合っています。
ただ、授業内容とニーズがマッチしていないのは事実だと思います。
子ども達は「学び」自体は嫌いではありません。しかし、教科書の学びに魅力を感じていないのもまた事実です。
「これが何の役に立つんだろう。」
そんな思いを持ちながら、とりあえず、何となく授業を受けている児童生徒も少なくないはずです。
つまらないと感じる要因②「評価」
「評価」については、私も最近よく考えます。評価は、本来は子ども達の学習改善を促すのが目的であるはずですが、逆に意欲を奪う要因になっています。
授業者も、評価に囚われてしまっているがために、授業をつまらないものにしてしまっている一面もあると思います。
個人的には、「できる」「できない」を評価するよりも伸び伸び取り組めればいいじゃん!と思うのが本音です。
もちろん、「主体的に学ぶ態度」という評価項目でその辺を評価できるのですが、子ども達はやはり「テストの点数=評価」といいう認識が強いですし、実際、テストの点数が評価に与える影響はかなり大きいです。
ですから、子どもたちにも「できる」「できない」が評価に直結するという意識は根強く、「できない子」はさらに意欲減退していきます。
つまらないと感じる要因③「宿題」
子どもが「宿題」に嫌気をさしているのは言うまでもないでしょう。
私は、「従来の宿題」は反対派です。
強制感が強く、何が目的で宿題をしているのか見失うケースがあるからです。
学習者である子どももその親も、ややもすると宿題を課している先生も、その目的を見失っているケースがあります。
宿題を強制すればするほど、子どもは宿題を「終わらせる」ことが目的になってしまいます。当然、せっかく取り組んだ内容も定着しません。
宿題をやっていない子どもを昼休みや放課後に取り組ませる教師もいますが、個人的にはナンセンスだと思っています。
強制的な学習の押しつけになっていて、子どもが宿題嫌いになる原因を作っているからです。
もっとひどい場合だと、子どもの生活態度が悪いと「宿題増やすよ」という先生がいます。
これは宿題を罰に使っていて、全くもって論外です。
また、渡辺さんの実践でユニークだと思ったのは、ずっと宿題を提出し続けている児童は、提出の頻度を週に一回、月に一回・・・と減らしていき、最終的には「宿題からの卒業」つまり、もう宿題を提出しなくて良い仕組みを作っていることです。
卒業を認められた子どもも誇らしいし、教師のマルつけ作業も減る。「自主的な学習」という宿題の本来の姿に戻してあげるという良いことずくめの実践です。
②学習中は静かに座っていなくていい
「授業中は静かに座って学習する」
これは、私たちが考える当たり前の教室の光景ですが、渡辺さんはこれも「足並みバイアス」だと考えています。
なぜなら、特に発達障害の子ども達は「動かす」ことによって落ち着きを取り戻し、学びに向かうことができるというエビデンスがあるからです。
欧米の学校では、教室から離れた場所に「バランスストーン」という飛び石が置かれていて、集中力が切れた子どもはその飛び石をポンポンと移動してまた自分の席に戻るという取り組みが行われており、渡辺さんも実践しているそうです。
これに関して、私も「取り入れたい!」と思いました。
バランスストーンをポチる寸前までいきました。
しかし止めました。まだ子どもがそこまで成長していないからです。個人的に、このバランスストーンを取り入れるためには、子ども達に一定の規律が備わっており、誰がポンポン飛び跳ねていても自分の学びの集中を切らさない力が必要です。
私がまだそういう力を付けさせてあげられていないので、今回はストップしました。
また、渡辺さんは座る場所や座るものの素材などもに工夫を加え、バランスボールや畳間なども学習場所として認めているようです。
私の住んでいる地元の新聞でも、未来の教室はこんな風に子どもが多様に学ぶようになるという記事が掲載されていました。
同じ授業なのに、自分の席で1人で学んでいる子、広場にグループで集まって話し合っている子など様々の学びがあるのです。
今後、デジタル化の推進や価値観の多様化が進むと、本当にこういう時代が来ると思います。
欧米ではすでにそういう学習が当たり前で、むしろ日本は遅いぐらいです。
現代の教育は、まだ昭和の「画一化」の名残が強く残っており、周りと足並みを揃えている「画一的」な人材を育てている要素は強いと思います。
いち教師として、子ども達が早く時代に即した学びに向かえるといいなと願っています。
③学びを選択するノマドスタディ
「ノマドスタディ」は子ども達が育ってきたころに渡辺さんが実践する授業スタイルです。
教師は「学習内容」と「終了時刻」を伝えるだけで、後は子ども達が自由に選択していきます。
大人も子どもも自分で決められる「裁量」があると非常にモチベーションが高まります。渡辺さんのクラスの子どもたちも、このノマドスタディの日はワクワクに溢れていて、とても楽しく学んでいるようです。
私たち自身に置き換えても、きっとそうですよね。
「自分で選択して取り組む」
そういう中で学習した方がやる気アップでいけそうだと思いませんか。
ただ、このノマドスタディを成し遂げるためには子ども達に任せられるだけの「集団としての力」が必要です。
ノマドスタディの実践に至るまで、きっと中身の濃い学級経営をされたんだろうと思います。想像するだけで私の憧れボルテージが爆上がりです。
まとめ
以上、渡辺道治さん著「学習指導の『足並みバイアス』を乗り越える」について私の見解を交えながら記事を進めてきました。
本書を読んでみて、渡辺さんの考えの軸は至ってシンプルだと思います。
しかし、その最適な手段を邪魔するのが「足並みバイアス」です。「揃えること」が常態化してしまうと、先生1人1人の個性も出せません。
私も、やはり「いち教師」として、より良い教育をしたい!と本を読んで勉強したり自分でアイディアを出したりしながらも、「足並みバイアス」の乗り越えられずに撃沈した経験はあります。
「揃えるって何なのさ!?」
「勉強してやる気満々なのにやっちゃダメなのか?」
こんな悩みを持ったこともありましたが、私も、子ども達が伸び伸びと学習活動に取り組めるように、「お試し」や「選択形式」を活用しながら「足並みバイアス」を乗り越えていきたいです。
今回紹介した内容はほんの一部で、本書には、これら以外にも渡辺さんの様々な実践がたくさん詰まっているので、もっと知りたいという方はぜひ本書を手に取ってほしいと思います。
さいなら~♪
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